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飲食店の安定経営に欠かせない、社員・契約社員の考え方と育成のポイント

人材を「人財」と書き換える人がいます。業種に限らず、安定経営には人を欠かすことができないからです。

これはもちろん、飲食店でも同じこと。むしろ、アルバイトが多い業種だからこそ、社員という存在を重視するべきかもしれません。

今回は飲食店経営を安定させるための社員、ならびに契約社員の採用、育成について考えていきます。

 

飲食店経営に人は欠かせない。 特に社員の採用が鍵を握る
飲食店には多くのアルバイトが働いています。

学生アルバイトの中でもリーダー的存在になる人はいますが、卒業と同時に辞めてしまうことがほとんど。

フリーターはとてもありがたい存在ではあるものの、社員に比べるといつ辞めてしまうのかがわからず、責任ある仕事はもちろん、会社の未来を託すことはできません。

それがなぜかと言うと、アルバイトはワーカーだから。アルバイトリーダーはワーカーのプロということになります。

 

一方社員は、会社の未来を左右する貴重な人材となります。

例えば、2店舗目、3店舗目と複数展開する場合や、複数の店舗をまとめてみるスーパーバイザーのような存在になりえます。

これらの仕事をアルバイトに任せたいと言う人はいないでしょう。

社員も流動化が激しいと言われていますが、正しい人選を行い、正しい育成をすれば、アルバイトもずっと頼りになる存在。

そして、店舗のキーマンになることは間違いないのです。

 

なぜアルバイトリーダーより社員かを考えてみる
アルバイトへの仕事の任せ方は、オーナーの考え方により違います。

中にはマネジメントに近い部分をやらせる場合もありますが、それはあくまでもオペレーションの延長。

その証拠に、責任が付随していないはずです。一方社員であれば、オペレーションができなくても様々なことを担当させるようになります。

それがアルバイトと社員の大きな違い。

ここではまず社員が店舗にとっていかに重要である点を考えてみましょう。

主には以下の3つかと思います。

 

  • 勤務時間が長い
  • 長期的プランが立てられる

 

次の店の店長に見据えられる

では、それぞれを見て行きましょう。

 

勤務時間が長い

アルバイトは手の空いた時間に働くのが基本です。

学生であれば授業がある時間は働きませんし、長期休暇で帰省し、試験前だからと休むことがあります。

中にはフリーターのように、店舗側に勤務時間を任せているケースもありますが、この場合でも、何かプライベートで優先すべきことがあれば、仕事を休んだり時間を短くしたりするはずです。一方社員は、仕事が優先です。

人のいない時間にシフトインしてもらうことができ、それが1週間に40時間あります。

さらに、その時間は責任者として働くわけですから、お店としては大助かりなはずです。

 

長期的プランが立てられる

社員は契約上も、そして実際にも無期の勤務となります(アルバイトは有期)。

さらに、新店舗がオープンする場合、勤務地を変えることもできます。

アルバイトであれば、「卒業と同時にいなくなってしまう」というケースもありますが、社員であれば基本的にそういった心配はありません。

 

次の店長に見据えられる

そうであるからこそ、社員には、「将来的に店長になって、スーパーバイザーになって、新店開発をして・・・」などという将来性を見据えた教育をしていきます。

これは、人材を育てるという側面と、会社も大きくなるという側面があります。

もちろん、社員も急に辞めたり、出産や介護のより一定期間休んだりすることありますが、それでも長期的な視点という意味では、アルバイトが社員の代わりになることはないはずです。

 

人件費負担はそれほど大きな問題ではなくなった

飲食店の人件費負担

それでも社員を雇うのに億劫になる人は、人件費が高くつくと考えていることでしょう。

給料以外にも賞与や社会保険や厚生年金も考えれば、それは事実かもしれません。

しかし一昔前は、アルバイトと社員を抱える場合の会社側の人件費負担の違いは非常に大きなものでした。

しかし、今はかなり縮まっています。

一例を挙げましょう。これは大手飲食チェーンの正社員募集で提示されているものです。

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月給 26万5千円

固定残業代 固定残業代4万7319円/30h・一律深夜手当9464円/30h

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月給26万5千円と聞くと高額に感じるかもしれません。では、その内訳を見ていきましょう。

まず、固定残業代、一律深夜手当は、月給に含まれる手当です。

基本給を計算するには、これを除く必要があります。

 

(月給265,000円)-(固定残業代47,319円)-(一律深夜手当9,464円)= 基本給208,217円飲食業の年間休日数は110日前後ですから、平均すると月に9日間休むことになります。

仮に月に21日勤務するとした場合・・・

基本給208,217円÷勤務日数21日=日給9,915円

日給9,915円÷1日の勤務時間8時間=1,239円 

 

これをアルバイトリーダーの時給と比較してみるとわかりやすいでしょう。

東京や神奈川は時給1000円を超えています。時給が上がっていることを考えると、社員採用の負担は意外と低いと思った方も多いのではないでしょうか。

もちろん他に、社会保険や厚生年金の企業負担分があり、有給休暇も発生します。

ですが、これは長時間働いてくれるフリーターでも条件はほぼ同じになっています。

トータルで考えれば、社員採用の人件費の負担が特別高いものではないことがお分かりいただけるでしょう。

 

店を任せられる社員の見極め方

店を任せられる社員

とはいえ、社員でも辞めてしまうケースが非常に多くあります。

中には、「今時の若者を育てるのはムリだ」と言い切ってしまうオーナーもいます。

しかし、このような悩みを持つオーナーは、雇われる側からすると、「あなたのもとでは働けない」と感じていることが多くあります。

 

その証拠に、人が辞めていないという店舗もたくさん存在しています。

この違いは何なのでしょうか。それを突き詰めていくと、社員側の問題ではなく、受け入れる店舗側にも問題があることが分かります。

人が辞める店とやめない店の違いを比べてみます。

 

社員は家族の一員か、捨て駒か

有能な経営者は人を大切にしています。

その典型的な言葉が、「社員は家族の一員だ」という言い方かもしれません。

もちろん、アルバイトも同じなのですが、社員は長期的に育て、自立させ、その社員の家族の生活も成り立たせているという意味では、親子関係にも似た関わりがあるのかもしれません。

一方、社員を雇ってもすぐに止められてしまうオーナーは、そのような意識がありません。

仮にあると思っているとしても、それは自己満足。ピントがずれていることが多くあります。

その証拠に、中小飲食店をやめてしまった社員に話を聞くと、「オーナーが社員のことを捨て駒にしか思っていない」「長時間働くロボット扱いだった」などという声が聞こえてきます。 

受け入れ側が熱心だからこそ社員側もそれに応えてくれるわけで、受け入れ側が使い捨ての感覚でこき使っていれば、社員側も働きがいはなく、やめてしまって当然です。

もし、店舗に社員がいつかなくて困っているということであれば、あなた自身の発言や態度を改めなければいけないのではないでしょうか。

 

本当に家族の一員にしていい人かを見極める

とはいえ、中には、どうしても合わない人が存在します。

これは店側が悪いとか、社員が悪いというわけではなく、相性の問題かもしれません。

体育会系のノリが好きだという人もいれば、 毛嫌いしている人もいます。

また実務面では、オーナーは残業を無くそうと社員を増やしたことで給料が安くなり、それが原因でやりがいがなくなったと感じる人も出てきます。これもある意味、相性です。

不思議なもので、人事のスペシャリストが人の採用している大手企業では、似たような雰囲気の人ばかりを採用していきます。

これは相性や、会社の文化を尊重した結果です。規模は小さくても同じことが言えます。

家族の一員として受け入れるのに双方に相違がないか、十分にやっていけそうな人なのかを最初の時点で見極めるのも大切なことです。

中には、人を見極める自信がないと感じるオーナーもいるかもしれません。

そのような場合、エージェントを使って採用する方法もありますので、最適な方法を見つけるようにしてください。

 

社員よりも頼れる存在!?契約社員を受け入れる

飲食店の社員よりも頼れる存在、契約社員を受け入れる

もうひとつ注目されている方法に、契約社員があります。

まずは、契約社員がどういうものかを見ていきましょう。

多くの場合、時給(あるいは日給)での雇用となりますので、その点はアルバイトと変わりません。

しかし、 契約社員を希望する人の中には、何らかの事情があって、「社員としてフルタイムでは勤務できないけれども、社員と同じくらい能力がある」という人も増えています。

そういった人を取り込むことで、店舗としては、運営が楽になります。

例えば、子供がいるので一週間40時間は働けないというケース。特にパートさんなどに多いようです。

こういった人の中には、社員になって夜も勤務するのは無理だけれども、昼の時間帯であればリーダーができ、人の管理や教育なども行えるということがあるのです。

こういう人を時間帯リーダーとして雇えば店舗は安泰。

中には、時間帯店長として、契約社員でありながら名実ともにリーダーとしているところもあります。

また、こういった人たちはやりがいのある勤務先を求めており、条件が良ければやめないのも魅力です。

 

契約社員だけで成り立つ店舗の例

筆者の知っているケースをお話ししましょう。東京都下にあるファーストフードの店舗です。

元々、オーナーと奥さんが中心となって運営を行い、アルバイトを20人ほど抱えていました。

しかし、奥さんが出産をしたことで社員を求めましたが、思うような人が見つかりません。

そこで、店舗勤務していたフリーターの2人を契約社員として雇うことにしました。

条件は、1日8時間週4日勤務。もちろん社会保険にも入れ、金一封ながらボーナスも支給しています。

その後、「週休3日は魅力的だ」と言って、もう一人、雇い入れることができたそうです。

今では多くの時間帯を契約社員とアルバイトだけで回しています。

オーナーは2店舗目の出店を視野に入れ、活動中。新店舗には契約社員を一人連れて行き、時間帯店長にする計画だそうです。

最近は仕事の仕方も多種多様。有能だからフルタイム勤務という枠にはまらないからこそ、能力が発揮される人もいるわけです。

オーナーの柔軟な対応が成否をわけるのかもしれません。

 

社員の育て方

社員または契約社員を雇ったら、育てなければなりません。

社員または契約社員を雇ったら、育てなければなりません。

最初から何でもできる人はおらず、育てていくことで有能な社員になることを忘れてはいけません。

また、いずれはオペレーションの面でもアルバイトよりできるようになりますが、最初はアルバイトよりも劣ります。

それにより彼らが辛い思いをすることあるのです。

そのようなとき、アルバイトから突き上げられた上に、オーナーからも、「社員のくせに」と言われたのでは元も子もありません。

社員とアルバイトは求めるものも、ゴール地点も違うのですから、そこは双方に理解し、正しい方法でフォローする必要があります。

 

アルバイトと社員は明確に区別する

社員はオペレーションだけでなく、マネジメントもやらなければなりません。

最初から多くのことを望むわけであり、オペレーションの達人であるアルバイトから見るとその存在が煙たく感じられます。

そこで、オーナーが、「社員は特別な存在である。だからオペレーションができなくても問題ない」と明確に伝えることが重要です。

また、アルバイトが社員になる場合も同じです。

アルバイト時代と同じ感覚で仕事をされたのでは、社員にした意味がありません。

立場が変わったことを皆に告知することで、周りはもちろん社員になった人も自覚が生まれてきます。

 

今だけでなく明るい将来も見せる

アルバイトは店舗の5年後、10年後の姿はあまり気になりません。

もちろん、ずっと存在してくれることは嬉しいのですが、当事者意識として、自分がその店をどうこうしていこうという意識はありません。

一方社員は、5年後、10年後に、店舗がどうなっているのかは気になります。

そして、自分も店舗も成長しているのが理想的だと考えます。

そのため、「いつかは店を任せたい」とか、「会社を大きくしていくために力を貸してほしい」というように、明るい未来を見せることが重要です。

近年では、負担が大きくなることを好まず、出世を望まない人も多くいます。

それでも、会社が潰れてしまうことは望んでいないはずです。

自分が安泰でいるためには後輩が育ち、楽しい職場であることは必須なこと。それ故、会社に明るい未来があることを見せることが大切なのです。

 

やむを得ない事情はできる限り加味する

短期的な戦力として育てていくアルバイトとは違い、社員は長期的な視野から育てていく必要があります。

その意味では、短期的なやむを得ない事情はできる限り考慮するべきです。

例えば、 男性社員でも、奥さんが出産をしたとなれば多少の勤務時間の融通を利かせてあげたり、育休を取らせたりすることも必要かもしれません。

また、家族の介護が必要だとなれば、できるだけ融通を利かせ、それに対応できる体制づくりをしてあげるべきです。

もちろん限界はありますが、可能な限りの協力をすれば、双方の絆が強まり、それが将来の成長に繋がります。

簡単なことではないのかもしれませんが、社員は貴重な存在です。

共に育つという観点を持ち、「人材は人財」という言葉を心して、ともに成長してほしいと思います。

 

まとめ

今回は安定経営のための社員の採用と育成について考えました。

人材不足に悩みがちな飲食店ですが、一方で、「飲食店での接客が大好きだ」という人が多いのも業界の特徴です。

アルバイトとは違う存在の社員を育て、オーナーと伴走し、

共に夢を叶える存在に育て上げることが双方のためであることを今一度考え、社員採用・育成に励んで頂ければと思います。

この記事の執筆者
CAROT運営事務局

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