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「飲食店は立地がすべて」は本当か?開業後に後悔しない物件選びのコツ

「飲食店は立地がすべてだ」と言う人が多くいますが、それは事実でしょうか。

また、何を持って自分にベストな物件だと判断すれば良いのでしょうか。

飲食店がオープンし、3年以内に7割もの店が閉店すると言われる中、どのような物件を選ぶべきなのかについて深掘りして行きます。 

 

飲食店は一等地にある飲食店の方が有利なのか?


最初に、2人の例を挙げます。どちらも実際にあった店舗の話です。

 

立地を優先して選んだAさん


Aさんは長年の夢をかなえ、居酒屋をオープンすることになりました。

約10年の板前経験があり、調理はもちろん、接客も十分にできます。早く大きな儲けを出したいと考えた彼は、立地がよい物件を探しました。

そして、新宿駅から徒歩1分の地下1階の物件を契約します。

物件の広さは約17坪で、賃料は約60万円(坪単価約3.5万円、敷金・保証金10ヶ月、礼金1ヶ月)。

客席数を多くとりたいと思い、30席の席を用意しました。

 

立地を優先しなかったBさん

 

同じく居酒屋を開きたいと思ったBさん。彼も10年の板前経験があり、店舗運営に必要なスキルは見つけていました。

ただ一つ違ったのは、初期投資やランニングコストを出来るだけ抑えた店舗運営をしたいと考えたこと。

そんな彼が選んだのは東京メトロ東西線の南砂町駅から徒歩7分の路面店。

住宅地にある物件で、広さは約15坪、賃料は16万円(坪単価約1万円、敷金なし、保証金3ヶ月、礼金1ヶ月)。

こだわりの商品をゆったりとした雰囲気の中で味わっていただきたいと考えた彼は、席もゆったり配置し、約16席を用意しました。

この両極端な店舗は、オープン後、全く違った課題を抱えることになります。

 

Aさんの店の半年後の課題

 

Aさんの店は高い家賃を払うためには回転率を上げるしかありません。

そのため、複数の従業員を雇うことになります。これにより、家賃に加え、多くの人件費を負担することとなりました。

また、多くのお客を呼び込むために、近隣店舗よりもわかりやすい魅力を打ち出さなければなりません。

駅前にあるわけですから近くにあるのはチェーン店が多く、ビルの1階にも安売りを特徴にした居酒屋が出店しています。

その結果、どうしても価格で勝負せざる終えなくなってしまいました。

さらに、売上が上がらないからと商品単価を下げたり、クーポンを乱発したりするようになります。

それなりに客数はキープできるものも、利益を出すことができません。 

 

Bさんの店が半年後の課題


元々人通りのない住宅地への出店だったので、お客はなかなか来てくれません。

しかし、客席数が少ないため従業員は雇わず、夫婦だけで店舗を切り盛りしているので、

人件費を気にする必要はありませんでした。家賃負担も少ないため、時間をかけて来客を待つことができます。

来客が少ないから効率よく利益を上げる方法を考えようと、客単価を高くし、利益率を上げることで経営を安定させようと考えます。

そのために必要なのは、料理のクオリティを上げること。原価率を上げない工夫をすること。

サービスの質を下げないこと。これらの問題をクリアすることをテーマにじっくりと取り組んでいます。

さて、AさんとBさんは、全く違う問題を抱えることとなりました。どちらが息の長い商売をしていけるのかは一目瞭然です。

 

中小店舗が選ぶべき物件像とは

中小零細の飲食店経営者が選ぶべき物件を表現する画像
 

飲食店という括りでは、どちらが正解で、どちらが間違っているというわけではありません。

駅前に大きな店舗を構えて大きく儲けている店舗もありますし、住宅地で手堅く儲けを出しているところもあります。

ここで考えるべきは、自分が戦える立地であるかどうかという点。

それを考えずに、単純に立地が重要だと言ってしまうことには問題があります。

立地のよい物件は、お客も多く来る代わりに、家賃は高額になります。

さらに、ライバル店も多くあるために、常に価格競争をしながら、ギリギリの選択をしなければなりません。

 

しかも戦う相手は体力のある大型飲食店。有利な条件で食材を仕入れ、低い原価率を保つので利益を出すことができます。

しかし、体力のない飲食店では、太刀打ちできません。

中小飲食店であれば、あえて1等地を避け、2等地、3等地を狙い、固定費を安く抑え、そこで生き残る術を探す方が賢明だと言えるでしょう。

 

物件を丁寧に探し、自分にとってベストな物件を探し出すことが重要


上記の例では、同じ都内の出店でありながら、坪単価は3.5倍もの差がありました。

契約時に払う敷金・保証金・礼金も、Aさんは660万円なのに対し、Bさんは64万円。約10倍もの差があります。

このコスト負担の違いは、その後の展開にも大きく影響することは創造できるでしょう。

良い物件を探すことは重要ですが、「自分にとって何が良い物件になるのか」はオーナーによって違うはず。

そこを正しく理解することが、物件探し以前に必要だと言うことです。

 

物件探しの3つの落とし穴

物件選びの落とし穴

 

ではここから、不動産屋に行って物件探しをする際に注意するべきことを3つお伝えします。

不動産屋の言う「すぐに契約しなくちゃ流れる」はほぼウソ

不動産屋に行くと必ず聞くのが、「すぐに契約しないと他の人に契約されてしまう」という話。

確かに掘り出し物件は、すぐに契約しなければなりません。

しかし、そういう物件はかなり限られているというのが本当のところです。

飲食店の物件は、大きく分けて3種類あります。

 

一つは表にでることなく借り手が決まる、超レア物件です。

これは店頭で案内されたり、ネットに掲載されたりする前に借主が決まります。

事業用物件の多くは3ヶ月前に退去を伝えることになっています。

申し出があると、大家さん、または管理会社が次の借主を探し出します。

超レア物件は、そのタイミングで有力な借り手に打診があり、借主が決定します。

このような物件は、図面もない状態。あなた自身が、それぐらい不動産屋と太いパイプがあれば別ですが、

不動産屋を回って物件を探しているというレベルであれば、このような物件情報の話が来ることは、まずありません。

 

次が、いわゆる掘り出し物件です。上記の方法では借り手が見つからなかったときに、一般に向けて募集がかけられます。

これは本当に条件が良く、比較的早いタイミングで借り手が決まってしまいます。

ただし、件数で言うとかなり少なく、全てのうちの1割にも満たない数です。

さて、上記以外の物件は、普通の物件となります。9割の物件は普通の物件です。

これは、その日のうちに決めなくても、他の人に取られることはまずありません。

言い方を変えれば、じっくり考えて3日後に返事をしても、おそらく契約できる物件です。

大家さん側の話ですが、「店舗物件は次の借り手を探すのに苦労する」ということが定説となっています。

それゆえ、退出するときに3ヶ月という長めの設定がされているわけです。

つまり、9割の物件は、「今すぐ契約しなければ他に決まってしまう」ということはありません。

その言葉を鵜呑みにし、じっくり検討することもなく契約すると、後で後悔することになります。

 

現業中物件の「盛業中」は疑ってみる


上記のような理由で、飲食店の大家さんは、まだ前の店が営業している段階から次の借主を探し出します。

そのような場合、物件情報に「盛業中」と書かれることがよくあります。

これは、「この物件はお客さんが多く来店している店だから、次の出店者も人気店になりますよ」と伝えることが目的でしょう。

しかし、その店舗があまりにも人気で、さらによい条件の物件に移転するのは稀です。

多くの飲食店は、1店舗がうまくいけば移転するのではなく、2店舗目、3店舗目と複数展開をするのが普通だからです。 

また、本当に盛業中で儲かっているのであれば、物件を手放さない人の方が多いでしょう。

さらに、たとえ本当に盛業中であっても、業態が変わればお客は変わり、イチから集客をしなければならないのは当然のこと。

「盛業中だから自分も安泰だ」と考えるのは危険です。

 

造作譲渡の価格に相場はない


店舗物件には、スケルトン状態でイチから店舗を作る物件と、居抜き物件と呼ばれるものがあります。

居抜き物件は前の店舗の造作を買い取り、そのまま使用するか、あるいは多少のリフォームをして店舗をスタートするものです。

スケルトン状態から店舗を作るよりも安くスタートできるため、中小店舗を始める人に人気となっています。

ここで問題になるのは、店舗造作には相場がないということ。

この設定をするのは、中古品に対する知識のない前のオーナーであることが多いのです。

しかも、そのオーナーは売上が伸びず、やむなく閉店しています。

開業時の借金がまだ残っているとなると、少しでも高く造作譲渡をしたいと思って当然。そのため店舗造作は高額になりがちです。

しかし実際には、全ての什器は中古であり、いきなり故障する場合や、そもそも自分が経営をはじめる店舗では使えないことも多くあります。

そのため、価格交渉をするようにし、できるだけ安く買い取ることをお勧めします。

 

物件探しのポイント7つ

物件探しのポイント
 

注意点が分かったところで、実際に物件を探すポイントを見ていきましょう。

 

不動産屋は借主よりも貸主側を見ていることを理解する


不動産屋にはいくつかの種類がありますが、管理も行っている不動産屋の場合、

「条件が良い物件があれば借りますよ」という見込み客より、すでに物件を持っていて、付き合いの長い貸主との関係の方が重要です。

そのため、貸主の意向の方が優先されます。

つまり、無理な条件を言い過ぎると、本当によい物件を手放してしまう可能性もあるということを知っておくべきです。

 

本当の交渉相手は大家さんと不動産会社の2つあることを知っておく


物件を借りるとき、家賃交渉を行う人がいます。それ自体は間違っていませんが、それに終始するのは非常にもったいないことです。

例えば、賃料を安くしてもらえないのであれば、敷金や礼金を安くするという交渉があります。

この交渉相手は、不動産会社経由になるとしても、判断をするのは大家さんです。

この交渉がうまくいかなかった場合、次に狙うのは不動産屋との交渉。

仲介手数料を安くすることができないかを交渉します。交渉相手は2つあることを覚えておきましょう。

 

賃料はギリギリ出せる金額ではなく、控えめに伝える


不動産屋にはノルマがあります。そのため、伝えた賃料よりも高めの物件を紹介することがあります。

高い物件はその分、よい条件であり、それを見つづけるうちに心が動き、結局、予算オーバーの高い物件を契約することになりかねません。

これを防ぐために、最初に不動産屋に伝える賃料は、ギリギリ出せる金額ではなく、低めにするのがポイント。

安めの賃料で借りられる物件を見て、徐々に価格を上げていくことで物件のよい点が見えてきて、正しい判断が行えます。 

 

居抜き物件を雰囲気だけで見ない 


飲食店は居抜き物件を最有力候補としてみるべきであることを前述しています。

しかし、実際に物件を見て、「雰囲気が違う」と言ってすぐに諦める人が出てきます。しかしこれは間違った判断です。

店舗で一番お金がかかるのは、厨房のダクトやグリストラップ。これがそのまま使えるのは大きなメリットです。

また客席の雰囲気があっていなかったとしても、仕切りだけが使えるなど、パーツごとに見ていけば有効な使い方が見えてくるはず。

「雰囲気が違う」と見た目だけで判断せず、冷静に使えるところ、使えないところを判断するようにしてください。


 

借主の入れ替わりの早い店は、その理由を聞く 


飲食店は入れ替わりが早いという点があります。中には1年持たずに店舗がどんどん変わっているという物件もあります。

ここで重要なのは、どんなに努力をしても全くお客が来ない物件なのか、単純に営業努力が足りずにお客が来なかっただけなのかを知ることです。

前者であれば自分も出店すべきではありませんが、後者であれば問題はありません。

不動産屋には、必ず前の店舗、さらにその前の前の店舗の契約期間を聞き、なぜクローズしたのかも聞くべきです。

中には、2回連続で集団食中毒を出し、その建物自体が悪評の元となっているケースもありますので、注意が必要です。

 

全ての営業時間帯の下見をする


居酒屋やラーメン屋の場合、深夜営業をすることが多くあります。

しかし、不動産屋と物件を見に行くのは日中であることが多いでしょう。

ところが、物件によっては時間帯で近隣の状況が大きく変わるところがあります。

深夜になると近隣のコンビニ前に素行の悪い若者が集まり、一般のお客が寄り付かない店舗もあります。

また、早朝に営業をする場合、ゴミがいたるところに散乱し、お客に毛嫌いされていることもあります。

これらを防ぐためには、全ての営業時間帯に物件を下見するべきです。

不動産屋の「急いで契約しなければ他に決められてしまう」という言葉に乗せられて、特定の時間帯だけを見て契約するのはやめましょう。

 

意外に確実。飲食店オーナーネットワークを使う


物件の情報を持っているのは、不動産屋だけとは限りません。飲食店同士の横のつながりから有力な情報をえられるケースもあります。

「近所の○○店のオーナーは高齢で引退したがっている」とか、「家族が病気になったから、来月、店を閉めるんだよ」という情報は、

飲食店どうしたから気軽に話せること。これらの情報を聞いた上で、「その物件を扱っている不動産屋を紹介してもらえませんか」と言う方法があります。

「初めて店を訪れた人に、そのような情報は教えてもらえないじゃないか」と考える人が多いようですが、

飲食店で働く人は仲間意識も強く、意外と積極的に話をしてくれる人が多くいます。

もちろん、何も頼まずに情報だけくれと言うのはよくありません。

コーヒーや酒を飲みながら、「この近くで物件を探しているんですよ」という話をすれば、気軽に相談に乗ってくれます。

もちろん暇な時間を見計らっていくべきですし、店舗のオーナーと話をしなければ意味がないことは当然です。

 

まとめ


今回は飲食店が物件を探すときのポイントについて掘り下げました。

儲かる店をだすことと立地は密接なつながりがあり、選択を誤ってはいけません。

しかし、何を持って儲かる店とするのかはオーナーによって違うもの。

必ずしも一等地に出店しなければダメだということではないので、そこは正しい判断をしなければなりません。

自分にとってベスト、またはベターな店舗を見つけ、自分で育てていくことが重要。

そのために育てがいのある物件を見つけるようにしてください。
 

この記事の執筆者
CAROT運営事務局

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