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飲食店の新型コロナウイルス対策成功事例からわかる対策方法

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言や外出自粛によって、多くの飲食店が一時休業したり、売上や利益を落としながらもテイクアウトでどうにか営業を行ったり、苦しい状況に陥りました。

そんななか、工夫をすることで、コロナ禍以前よりも利益を増やすことに成功している飲食店もあります。

ここでは、新型コロナというピンチをチャンスに変え、営業を続けているお店の事例を紹介するとともに、それを可能にした要因とは何か、を考えてみようと思います。

 

飲食店の新型コロナ対策の成功事例まとめ

新型コロナウイルスによって、飲食店は大きな危機にさらされましたが、その危機をうまく乗り切り、売上や利益を上げることに成功したお店の事例を具体的に紹介していきます。

 

レストランsio

東京、代々木上原のレストラン『sio』は、新型コロナの状況でもスピーディに様々な試みを行い、新型コロナ以前よりも売上を約10割、つまり売上を2倍程度まで増やすことに成功したお店です。

sioでは、お店のレシピをTwitterやnoteで無料公開したり、オンラインサロンで料理教室を開催したり、ベトナム風サンドイッチのバインミーや日替わり弁当や惣菜などの低単価の商品のテイクアウトを行ったりと、コロナ禍のなかでも積極的に新しいチャレンジを行いました。

noteのレシピには数千のいいねがついたり、Twitterの「おうちでsioレシピまとめ」は1万フォロワーを超え、大きな反響を得ています。「料理楽しい研究所」というサロンには、263人の人が参加しています。

そして、インターネットでお店の存在を知ってもらうとともに、提供したレシピを試した人が、答え合わせをするためにお店を訪れたりという流れができているのです。

sioのシェフであり社長でもある鳥羽周作氏は、以下のように語っています。

 

レストランのイズムが詰まった、レストランクオリティのものを全力で安価なもので提供することで、いままでリーチをかけられなかった層にレストランの体験価値を提供することで、コロナが終わったらお店に行ってみよう、体験してみようという流れが生まれ始めた。安い商品、レシピを無料公開で作れたエンゲージメントは、本来飲食店が最初に持つべき一番大事な絆。

Bistro plein

東京、表参道のレストラン『Bistro plein(ビストロプラン)』は、3月に店舗の完全休業を即座に決定し、オンラインショップでキッシュの販売を開始。主にSNSでの告知によって、10日間で1500個を販売しました。

その後、シャルキュトリー(食肉加工品)のオンラインショップをオープン。オンラインショップでは、店舗で人気のパテ・リエット・ソーセージなどの8品を信頼のおける精肉業者に依頼し、個包装・冷凍状態で販売しています。

「食卓をフレンチビストロに」をコンセプトとしており、すべての商品は冷凍チルド便で発送され、湯煎で解凍すればいつでもお店と同じ料理が味わえます。

家でちょっと贅沢においしいものを食べたいというニーズにマッチし、売上げは好調に推移しており、すでに投資額を回収できているそう。

経営者である中尾太一氏は以下のように語っています

多くの被害はあったが、食を強みとした中小企業だからこそ出来る事を考え、“選択”と“集中”をし、スピード感を持って変化に対応したことで最悪の状態を回避できた

さらに、お家で楽しむことを提案するために、現在はウィズコロナに特化したテイクアウト業態の開発を進めています。

おへそ

浜松の「和牛と魚貝 おへそ」は、コロナの状況でも赤字になることなく営業を続けています。

おへそでは、新型コロナへのスピーディな対応が特徴的です。3月の時点で店内のアルコール消毒やスタッフのマスク着用を開始。

自粛後には、3密を避けるためにカウンター・広間・個室で、それぞれ1日1組限定営業を開始し、ぐるなびやSNSで発信。素早い対応で信頼を獲得しています。

また、3月には卒業式や入学式などのお祝いをしたい人のために、オードブルや弁当のテイクアウトも開始。市内でテイクアウトをやっている店があまりいなかったことからも、多くの注文が入ったそう。

さらに、「期限付酒類小売業免許」を取得し、店内の希少な酒を提供しながら、「日本酒とあてのセット」や「ワインとキャビアのセット」などを販売。休業している飲食業界の仲間に車での配達を依頼し、デリバリーも行っています。

飲食店でテイクアウト商品を買う目的が毎日の食事に変わったところで、次は“家飲み”のニーズが高まると考えました。常に半歩先を想像し、培ってきた調理技術を駆使して、店をブランディングしていくことが大事だと思います。

参考:ぐるなびプロ

タルタルギーナ

神楽坂のイタリアンレストラン『トラットリア ラ・タルタルギーナ』は、テイクアウトに工夫をすることで、コロナ禍に対応しているお店です。

タルタルギーナでは3月からテイクアウトを開始。5〜6種類のパスタとサラダのセットを800円で提供しました。リーズナブルな価格もあって、店先にテイクアウトの紙を貼りSNSで告知することで、大ヒットしたそう。

さらに、店離れをさせないために、新しいテイクアウトメニューを矢継ぎ早に開発。イタリアンのトラットリアなのにも関わらず、南インドのカレーやナポリタンをテイクアウトメニューとして販売しています。プロの作る本当においしいカレーやナポリタンにこだわったことで、この商品も大ヒット。

ただ店内で出しているメニューをテイクアウトにするのでなく、客を飽きさせない工夫によって、テイクアウトを成功させています。

インターネットでECサイトを開設するサービス「BASE」でも、食事の前売りチケットを販売しています。

とこなつ家

池袋のダイニングバー・転職バー『とこなつ家』は、コロナ禍にあっても売上を維持し続けたお店です。

具体的には、「オンライン飲み会」や「独自でデリバリー」をして乗り切ったとのこと。UberEatsなどのデリバリーサービスは利用せず、これまで運用してきたインスタグラムやLINEによって、お客様に告知をし、直接注文を受けて配送まで行ったのです。

また、インスタライブでオンライン飲み会を実施し、QRコード決済を利用することで、投げ銭形式でスタッフにお酒を奢ってもらうという仕組みも構築。数時間で一定の利益を出せるまでになりました。

今後は、基本的なスタンスは変えず、あくまで飲食店の基本である「お客さんに楽しんでもらうこと」「ファンになってもらうこと」を行っていくとのことです。LINE公式を活用して、お客様とお店のコミュニケーションの活性化を進めていこうと考えているそうです。

ひのでやラーメン

アメリカ、サンフランシスコの人気ラーメン店「ひのでやラーメン」は、ロックダウンにより大きな打撃を受けましたが、テイクアウトやデリバリー、冷凍食品の展開によって奮闘しています

ロックダウンでは、テイクアウトのお店以外は閉店に追い込まれてしまい、ひのでやもまた経営を続けるかの判断をしなくてはならなくなりました。撤退はせず、これまでに経験のないテイクアウトを開始。テイクアウトに切り替えたお店に話を聞きに行き、やり方を学ぶことからスタートしたそう。

店舗の数も絞り、人員削減をして経営を1つの店舗に集約。デリバリー企業4社と契約し、デリバリーを行っていることを認知してもらい、徐々に注文を増やしていきました。さらに、SNSで告知をすることで、1日80件程度の注文が入るようになりました。

次には、テイクアウトのパッケージを真空パックに変え、ラーメンの長期保存を可能に。「ひのでや」オリジナルの冷凍食品を、全米チェーンの「Mituwa」と地元ストア「Mira」でも販売を始めることで、多くの人に商品が届く体制を整えています。

 

成功したお店の成功の秘訣とは?

ここまで、新型コロナ対策に成功している店舗の事例を紹介してきましたが、こういった事例からわかる、コロナを乗り切るための秘訣を考えてみたいと思います。

スピード

どのお店も新型コロナへの対応が素早いといえます。

閉業の決断、新業態への転換、雇用への判断もとても早いです。3月の前半など、コロナが本格化する前から、すでに対策を考えているお店もあります。

新型コロナのように、これまでにない状況であり、変化も激しい状況においては、とにかく試行錯誤をすることが大事になります。

スピーディに行動を起こし、PDCAを回し、適宜対策をしていくことで、正解を見つけることができるのです。飲食店は新型コロナの情報を常にキャッチし、考えられる様々な施策をスピーディに行っていくことが重要です。

お客様ファーストな姿勢

どのお店にも共通しているのが、「お客様のニーズを第一に考えていること」です。

新型コロナによって、家にいるしかないお客様、普段料理しないけれども料理をしなければいけないお客様が求めているものを考えるからこそ、ヒットするサービスを作ることができていると思われます。

ただ売上が厳しいからテイクアウトを始めよう、デリバリーをしようというのでは、お客様に響かないでしょう。

お客様が何を求めているのか、を第一に考えるからこそ、既存の概念に縛られることなく、ユーザーのニーズにあった商品を提供できているといえるでしょう。

sioのnoteの無料レシピ「#おうちでsio」を見ればわかりますが、その工程はわかりやすく、簡単です。これは、普段は料理をしないけどコロナによって、料理をしなくてはいけなくなった父親や学生でも料理ができるように作られているのです。

また、コンビニの食材を使っている人が多いからこそ、コンビニの食材を使ったレシピなども提供しています。

テイクアウト、デリバリー、通販への業態転換

新型コロナウイルスによって、外食をする人が減り、家で過ごす人が増えたことで、テイクアウトやデリバリー、通販の需要が高まりました。

それに合わせて、成功している店舗は素早くこれらの中食事業に乗り出しています。

既存事業に固執することなく、既存事業が厳しくなったら別の事業で売上を作るという柔軟性が、どのお店にも共通しているといえます。

また、BASEやクラウドファウンディングなど、新しいサービスも積極的に活用して、新しい可能性を模索しています。

専門商品の開発

テイクアウトやデリバリーを始める時には、もちろんお店で提供していた料理を、提供するメニューにすると思います。

提供していたメニューをただテイクアウトでお弁当などにした場合、ユーザーとのミスマッチが起こる可能性があります。

ランチ利用の場合などは、レストランの高額なメニューよりも、低単価で軽めのメニューの方が求められます。

だからこそ成功しているお店では、既存のメニューをただお弁当にするよりも、お客様のニーズに合わせたメニューを開発しています。

そしてお客様を飽きさせないためにも、メニューはレストランのジャンルにこだわることなく、お店が本気で作った本当においしいものである必要があるのです。

SNSの活用

コロナにも関わらず売上を上げているお店は、うまくSNSを活用しています。飲食店は個人のお客様がターゲットとなるので、個人がプライべートで楽しむために利用しているSNSと相性がよいでしょう。

SNSでテイクアウトやレシピ、新メニュー、営業情報などの情報を発信することで、多くの人にテイクアウトや通販などの情報を認知してもらえています。

ただ単にSNSで情報を発信するというよりは、ユーザーが拡散したくなるような変わったメニューや日常で利用できるレシピなど、お客様のためになるコンテンツを発信することで広く拡散されています。

また、常連のお客様とコミュニケーションをはかることで、より強いつながりを生み出すことができています。

まとめ

新型コロナウイルスによって、飲食店は厳しい戦いを強いられていると思います。

ただ、こういった状況のなかでも、様々な工夫をして売上を維持・増加させている店舗があることも確か。

それらのお店に共通しているのは、最も重視しているのが「お客様」であるということです。「お客様が求めているものはなにか」「お客様とのつながりをどう作るか」という飲食店の基本に立ち返ることで、苦しい状況でも多くの支持を得ているのではないでしょうか。

成功店が行っていることを参考にして、自分のお店が生き残っていくアイデアを生み出していただければと思います。

飲食業界の苦境に対して、CAROTでは少しでもお力になれるようにご協力させていただきます。

この記事の執筆者
CAROT運営事務局

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